遺伝子という言葉は今ではすっかり定着し、お茶の間でも聞かれるようになりました。メディアでは、毎日のように遺伝子にまつわるニュースが取り上げられ、生命の真実を想起させる神秘性は失われてゆきました。しかしながら、WEB上ではバイオテクノロジーや医療など様々な領域でホットスポットとなっています。特に、人々が漠然とした危機感を覚えているのが遺伝子組み替え食品という分野でしょう。ヒトは、生きるために食べます。しかしながら、私たちが口に入れるモノの安全性に対する選択肢が失われつつあるようなのです。また、種子という「いのち」が、商業的な情報として扱われ、多国籍企業などによって法的に所有されています。(人間の母乳の成分の遺伝情報さえ、企業の特許、知的所有権が認められているのです。)

1980年代前半、バイオテクノロジー関連企業や穀物メジャーなどの一部の多国籍企業による遺伝子特許争奪戦は、種子戦争と呼ばれる程に過熱しました。当時の合い言葉、「種子を制するものは世界を制する」というフレーズは「遺伝子を制するものは世界を制する」でした。そして、科学的な発見・発明から応用までの機関が非常に加速されている現代、非常に多くのものが安全性や倫理に関しての十分な議論をかわされる事もなく、瞬く間に商業利用されています。同じ地球に生きる多くの人類が知らされる事もなく、認めた記憶のないルールの中で生活する事になりました。

しかしながら、たった10年の間に世界を制したように見える種子問題も実際は政治的な背景を持ちながら、非常に長い時間をかけて用意されてきたようなのです。そして、それが表に現れたのは、世界を饑餓から救うという理由で始まった緑の革命なのです。

2002年に『飢餓との戦い』をテーマにFAO(国連食糧農業機関)の第2回世界食料サミットがローマで開催され、飢餓への対応手段として遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーの使用を正式に承認しました。サミットは米国主導で運び、バイオテクノロジー活用承認の背景には米国からの強い働き掛けがあったとみられています。『ビジョン21』を主宰する安田節子氏によると、“国際植物遺伝子資源研究機関(IPGRI)の著名な作物遺伝学者Hawtin長官が、世界の種子銀行が資金不足に陥っており、作物の多様性を保護し、飢餓との戦いを支援するために2億6000万ドルが必要だと訴えました。 現在世界中で約1300ある種子銀行では、およそ600万のサンプルを有しています。 FAO によれば、農業作物の生物多様性は、生産性の高い作物への要求によって急速に縮小してしまいました。長い期間にわたって食物・農業用におよそ1万種の植物品種が使われてきましたが、今では植物性食物の90パーセントが120種ちょっとの品種によって提供されているにすぎないといいます。
干ばつや社会的混乱、ハリケーンなどの後、その地方の共同体が植え付けの種を失ってしまった時、種子銀行は人々がこれまで使ってきた種子を再導入する機会を与えることができます。
またこれまでの品種が病気で絶滅したり、世界的気候変動が起こるとき、生物多様性(遺伝子資源)が必要となります。”

ところが、実際の種子銀行は資金難です。オーストラリアのThe Seed Savers' Network を主催するジュードとミッシェル夫妻によれば、「経済的な事情から、遺伝子バンクでは、ある遺伝的状態を完全に維持するのに必要な料のサンプルを栽培する事ができない」といいます。また、遺伝子バンクでは発芽能力を試験しまた、栽培して新しい種を増やして保管するという重要な過程が十分に行われていないということです。『飢餓との戦い』をテーマにローマで開かれたFAO(国連食糧農業機関)の第2回世界食料サミットにおいて、国際植物遺伝子資源研究機関(IPGRI)の著名な作物遺伝学者Hawtin長官が、世界の種子銀行が資金不足に陥っており、作物の多様性を保護し、飢餓との戦いを支援するために2億6000万ドルが必要だと訴えました。

また、別の問題は、近年話題になっている、遺伝子組み替えをされたGMOによる,固定種、在来種の種子汚染問題です。世界中で汚染被害にあった農家が報告されています。訴訟を起こしている農家も多いのですが、残念ながら、汚染された側の農家が賠償金をバイテク種子会社である多国籍企業に支払う事になったというケースさえあるのです。また、ある企業から種子を購入した農家は、その種子から自家採取をしないことを契約しているケースさえあるようです。ターミネーターと呼ばれる自殺する種子も開発され、種から育ち、種をつけ、その種子が育つと言う自然界の当たり前の秩序が一部の企業の利益のために壊され、その人為的な種が第三世界に輸出され、あるいは、支援として渡り、現地の生態系をおびやかしているのです。

一方、GMOに対して批判的なヨーロッパでは、法規制も進み、有機農業を営む農家にとって、追い風も吹きはじめています。いくつかの農業国家は明らかに進んだ(当たり前の?)解答として、遺伝子組み替えを法規制し実験をとめはじめたはじめたのです。

また、面白いのはキューバの事例です。ソビエト崩壊後、厳しい食糧難になったキューバは国策として有機農業を支援しました。アメリカによる貿易封鎖のおかげで、進んだ農業危機も、化学肥料も、農薬も手に入らなくなったキューバでは農民が昔ながらの方法で作物を生産し、また国は非常に強く都市農園を推進しました。キューバは今では有機農業の先進国となったのです。

世界では、現在、個人の園芸家から大きな専門組織まで、地域にあった種子を自家採取することで守り、交換してゆくローカルシードネットワークが増えています。

日本では代々受け継がれてきた種が、農家の経済的な窮状と人手不足により、顧みられなくなりはじめています。そういった地元の種を掘り起こしながら、少しづつ自家採取のムーブメントが起こりはじめました。また、固定種や在来種を扱う小さな種苗屋さんも徐々に増えてきています。自然農法家や有機農家のみならず、種を採ることの楽しさを知った市民ブリーダーも増え始めました。

数年来のスローフードムーブメントも重なり、自分で野菜を育てる事や援農型の農業体験も定着し始めたようです。世界的に都市農園が注目され学校教育にも農園が取り入れられています。種子を入手し育てる事で、市場では手に入れる事の出来ない野菜を味わう機会が出来ます。

種から育てて、種をとる、このシンプルな行為はやがて大きな力となり、私達の手に自分の命を自分で管理する権利を取り戻してくれるでしょう。

種は生物学的な価値のみならず、さまざまな側面から私たちの思考を写し出しているのです。私たちは、ひと粒の種に永遠をみはじめています。

Peace Seed Org