種子とひとことで言っても、さまざまな「呼び名」があります。F1、ハイブリッド、固定種、在来種、家宝種(エアルーム)、伝統種、オーガニックの種、オープンシード、スローシード…。ある種苗屋さんに問い合わせたところ、タネも野菜も、伝統・在来・地方などという形容詞は、「使いたい人間が勝手に
使っているだけの名」だということ。種に出会ったばかりの人には、わかりづらい状況です。
インターネットを眺めていると、多くの「種系サイト」では、F1品種を自家採種出来ないものとして悪者扱いしている傾向があります。実際にどうかというと、F1品種から種子を採種しつづけて固定させているシードセイバーもいるのです。じつは筆者もそのひとり。とりあえず種子をとってみて、何が出てくるのか楽しみに待つのも種取りの醍醐味です。試した中には、一代目とは全く異なった品種が育った(独立の法則)ものも確かにありました。また、在来種には確かに栽培が難しいものもあるので、「食べる」ための家庭菜園をでは、育てやすいF1品種も平行して栽培するのがいいかもしれません。遺伝的な特徴を守りながら自家採取をする際には、品種ごとに交雑の防ぎ方を調べてから計画的に種を蒔きましょう。でも、家庭菜園で自分が楽しむだけなら、交雑しても気にせず採取してしまうというのもありなんです。気楽に自家採種にチャレンジしてみましょう。
始めは、在来種や固定種を扱う種苗店でお気に入りの野菜を見つけて種子を購入するのが簡単です。また、もし身近に自家採取をしている方がいたら、お願いして分けてもらうのも良いでしょう。ただし、その場合は、誠実に、丁寧にお願いしましょう。種の交換会で入手した種のパテントを取得してしまった心無い方もいらした様ですから、種を守っている人も慎重になり始めています。
また、有機農家にもF6やF7といった種子を保持している方々もいます。八百屋で飼った野菜や果物の中にある種を残して育てるのも楽しいです。ですから、気軽に、手元にある種から試してみるのも面白いでしょう。失敗しても何度もチャレンジをして、“自慢の種”を育てましょう。
| 在来種 |
ある地方で長年栽培され、その地方の風土に適応した品種。丹波の黒豆や京野菜など、他の地方ではうまく育たないような品種もある。在来種や伝統品種は
いわゆる“昔からある種”のことで、厳密な定義があるわけではない。F1品種が生まれるまでは、どの種も「ただの種」だったということ。 |
| 固定種 |
何世代もかけて選抜淘汰が行われ遺伝的に安定した品種。自家採取によって安定した種子を増やすことができる。遺伝的多様性に含んでいるため、収穫が揃わない。農業には不向きだが、長期間収穫ができるので家庭菜園には向いている。品種改良は戦後発達したため、素人から見れば多くの固定種の歴史は以外と浅く感じられる。それでも、人間が60〜70代でキリストの時代まで遡るとすれば、戦後の種のサイクルも同じか、それ以上の代を経ている。ただし、固定種といっても、「そのまま永遠に変わらない品種」と言う意味ではない。いったん固定した品種も、20年以上選抜を繰り返して純系にし過ぎると、自殖弱勢を引き起こし、子孫を得るタネとして使い物にならなくなる。そういう場合、他の系統と交雑させて雑種強勢効果を得て再び元気な種子にする。こうしたことは経験即で良く知られ、世界中で行われてきた。実際、固定種と呼ぶまでどのくらいの期間がかかるかというと、選抜をどこまで厳密にするかで違いもあるが、親同士が近い場合で5,6年、遠い系統だと7,8年以上ほどで固定するという。野口種苗の野口氏によると、「固定種という言葉も、
F1 が出てきてから、差別語として広がった経緯があります。F1 以前は、ただ単に本来の意味での「タネ」だったのです。伝統野菜という言葉も、店頭で手に入れられる野菜が、同じような顔をしたF1野菜ばかりになった結果、アンチテーゼとして生まれてきた言葉と思います。」ということである。 |
| F1 |
F1とはFilial 1の略語で、「第一世代の」という意味。ハイブリッド品種ともいう。縁の遠い遺伝形質を持つ親をかけ合わせて作った雑種の一世代目のことです。
交雑によって生じた雑種第一代は、優性形質だけが現れ劣性形質は潜在するというメンデルの法則を利用して、高収量、均一、早く育つ、耐病、耐虫、美味などの好ましい性質を持たせるために異なる品種を人為的に交雑させて生み出した優秀な品種。2世代目は優性形質を現すものと劣性形質を現すものが分離して現れるもの(分離の法則)と、それぞれの形質が無関係に遺伝するもの(独立の法則)があるため、自家採取する人には好まれない傾向があるが、その不確実性を楽しみとして採取を行い、育種することも品種によっては可能。家庭菜園でも農業でも、
FIならではの品種があるので、うまく育てわけると良い。F1の子はF2と呼ぶ。「F1技術は種苗会社が毎年種子を購入させるための戦略」であるという理由からF1を嫌うシードセイバーは多い。
*一代交配種とF1は別のものだが、種苗会社の資料でも区別されていない。最近は、種子袋に一代交配種と表示されているものばかり。F1は少なくなっている。一代交配種には交配の過程でバイオ技術によって生み出した遺伝子資源を使っているものがあるが種苗会社の秘密らしい。おすすめしない。 |
家宝種
エアルーム |
在来種・固定種。「エアルーム」とは、先祖代々伝えられてきた、という意味である。一般的には50年以上栽培されたものを指すが、種子保全団体の草分けであるシードセイバーズエクスチェンジでは、「ある家族の中で宝石や家具のように歴史的に受け継がれてきたあらゆる園芸品種」と定めている。いわば家庭菜園家や農民が代々採種を繰り返し、世代から世代へと伝えてきた「家宝種」である。
ひと粒の種の中に遠い故郷や祖先の記憶を宿したエアルームシードは、まさに生命のある遺産ともいえる。これも、明確な定義があるわけではない。 |
| オーガニック |
有機農法で育てられた作物から採取された在来種・固定種で種子消毒されていないもの。 |