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2004年5月21日更新


スリムビュート・ランド・ユーズ・アソシエーション(米国)+CSOピースシード(日本)

''ここで起きているのは単なるガーデニングを超えた出来事なんだ。夢中になっている人々や子供たちの目の輝きを見れば、一目瞭然だろう?貧困という苦しみの中で深く落ち込み喘いでいる人々にとって、このガーデンは何よりもポジティブな生き甲斐をもたらすものなんだよ。''
〜パインリッジ・コミュニティー・ガーデンのディレクター:トム・クック

''かつては、食べ物も着る物もティピさえも、バッファローから与えられたものだった。これからは、ヘンプがその役割を果たすのだ。''
〜オグララ・ラコタ前大統領:チーフ・ジョー・アメリカン・ホース

バファロー・ハンターからオーガニック・ファーマーへ。

ネイティブ・アメリカン・ラコタ・スー族。彼らは、ティピとともに大草原で移動生活をおくっていた勇敢なバッファローハンターとして、あるいはカスター将軍をうち負かした、偉大なチーフの名前と共に記憶されている。1868年に連邦政府との間に締結された「フォートララミー条約」以降、ラコタの人々は生活を保障される代わりに、リザベーションの中での生活を余儀なくされた。その後、条約は一方的に破られ、古くからの生き方を失ったラコタの人々は過酷で困難な道を歩むことになる.......

140年近い時が経過した現在、ラコタの人々が住むパインリッジ・リザベーションでは、土を耕し、種を蒔き、太陽の光とともに、栄養やミネラルが豊富なオーガニック野菜や、産業用ヘンプを育てる事への関心が急速に高まっている。スリムビュート・ランド・ユーズ・アソシエーションのディレクター、トム・クックがコミュニティー・ガーデンを始めた1985年当時、関東地方に匹敵する面積を有するリザベーション内に、わずか6つのガーデンがあるだけだった。
トム・クックとその仲間は、市民の要請に応じてガーデンを増やしていき、2003年には、52のコミュニティーにまたがる476のガーデンにまで発展させた。それは、ラコタの人々にホームランドの使用を制限する、法的な障害を取り除く作業と平行して実現した。

度重なる困難の中で、希望を与え続けるという役目。

パインリッジはアメリカ国内で最も貧困な地域だ。失業率は88%。1年間の平均収入$2.600。2万4千の人口のうち、67%が貧困線以下の生活をおくる。パインリッジでは、今までカジノ以外の、あらゆる産業が育たなかった。人口の60%が糖尿病を患い、80%の家庭がアルコール依存の問題を抱える。期待寿命はサハラ以南のアフリカ諸国並みの45歳にしか達しない。連邦政府の民族浄化政策がもたらした構造的な暴力が、ラコタの人々の肉体と精神を深く蝕み続けている.....


ガーデンでの収穫

このような壊滅的な状況を転換するためのポジティブな答えの一つがコミュニティー・ガーデンだった。米国農務省から長年配給されてきた食品には、塩分、糖分、脂肪分が非常に高く、様々な病気の原因になっていた事が指摘されている。コミュニティー・ガーデンで体を動かして働き、新鮮なオーガニック野菜を食べることは、バランスの取れた栄養の摂取と健康への着実な第一歩だ。「自らの土地で生きていくすべを打ち立てるという、ラコタの尊厳の回復と自給自足への夢こそが、大地を耕し種を蒔く際限のない努力を支えてきた。私達の役目は押し寄せる困難にもかかわらず、サポートの手をさしのべ、希望を与え続けることだ。」 とトム・クックは語る。

新しい展望、伝統的コミュニティーの再生のためのガーデン。

ラコタ・ヘンプの種子を手にする、トム(左)とアメリカン・ホース(右)

1998年、パインリッジのオグララ・ラコタ部族議会は、リザベーション内での産業用ヘンプの栽培を認可する法令を作った。これに対し武装した連邦麻薬取締局(DEA)が、収穫直前のヘンプ畑を急襲し作物を没収するという事件が起きた。ラコタの人々は条約で保証されている統治権を主張し、法の下で全面的に闘う姿勢をみせた。その後サウスダコタ州全域における産業用ヘンプ栽培の合法化を求める運動にまで拡大し、2002年の州の投票では、85%が産業用ヘンプ栽培の合法化を支持した。パインリッジの過酷な気候でも良く育つヘンプは、食品、オイル、紙、衣料、建材、医薬品など幅広い用途があり、新たな産業への展開が期待されている。

パインリッジは内陸砂漠に位置し、過酷な気候は作物の栽培を困難なものにしている。春遅い雪解けと、夏の終わりに来る早霜。栽培期間は短い。つまり、いかに効率よく作物を育てるかが問われる事になる。
昨年2003年度、まともに作物が収穫できたのは476あるガーデンのうち、わずか100程度だった。連日38℃を越す55日間におよぶ記録的な干ばつに見舞われ、水不足と強風が作物をおそった。あまりの暑さのために人々の足は農作業から遠のいた...。


点滴灌水システムは“命の水”を運ぶ。トムの仲間、ドゥエーン・ロックのガーデン。

いっぽう点滴灌水のシステムが導入されていたガーデンでは、みずみずしい作物を収穫することが出来た。点滴灌水は世界中の乾燥地農業に、まさに「命の水」を運ぶための必需品として広く活用されているサステイナブルなマイクロ灌漑のシステムだ。トム・クックは今年からガーデンの数よりも質を高めていく戦略にきりかえ、点滴灌水の設備をティヨスパエのガーデンから順次導入していく計画だ。ティヨスパエとはラコタの伝統的な親族関係を基本とする拡大家族のコミュニティーを指す。ティヨスパエが管理するガーデンは、作物の世話に連帯責任感が生まれ易い。さらにガーデンの作業を通じて、失われていた伝統的コミュニティーの再生が期待される。

ラコタ・ピース・ガーデン・プロジェクト。

こうした新しい展開の中で、ラコタと日本の市民による農と平和と人間の開発のためのコラボレーション「ラコタ・ピース・ガーデン・プロジェクト」が動き出した。
CSOピースシードのアイデアにトム・クックが深く共鳴したことによって始るのは、バッファロー・ハンターだったラコタの人々の伝統的な価値観やアイデンティティーと、彼らにとってなじみの薄い農という文化の融合を促すためのプログラムだ。
ラコタの人々の信念を一言で表す言葉「ミタクエオヤシン」(We are all related)とは、「全ての存在は繋がっており、この聖なる繋がりの中で生命は生かされている」という意味である。この繋がりへの認識をガーデンという場に当てはめて展開することが出来れば、ラコタの人々がガーデンへとフォーカスする動機となり得る。
太陽と協働しながら母なる大地を耕し、種を蒔き、自分で育てた作物を食する。そのプロセスの中で聖なる繋がりが実感される。やがてガーデンを舞台にした新しい神話がクリエイトされていく……このような文化的コンテンツは、WEBサイトやブックレット、リザベーション内のFMラジオ局KILIから発信される予定だ。

なお、ラコタ・ピース・ガーデン・プロジェクトの3つの柱は以下のようなものである。

パインリッジでの実践的なガーデン・プログラム
価値観やアイデンティティーの進化のための文化的なプログラム
新しい平和の文化を築くための、トータルな創造力を養う人間開発プログラム

ラコタピースガーデンプロジェクトのページへ
パインリッジ・オグララ・ラコタ・リザベーションの現実 もご参照下さい。

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