上林裕子

ジャーナリスト
“みんなの種宣言”提唱。
“小さな種の会”の運営メンバー。
ワークショップなどで配付したコラムや緊急提言をピースシードのサイトに寄稿してもらいました。

連絡先:
kmbs@mvj.biglobe.ne.jp

CONTENTS
新着順に並んでいます。
「WTOは人を殺す」
カンクンで韓国農民が死の抗議〜イ・ギョンヘさんはなぜ、自らの命を絶ったのか〜
2003年10月12日
茨城・岐阜・滋賀で遺伝子組み換え大豆作付け
2003年9月
GMと農業は共存しない〜モンサントと闘うカナダ農民シュマイザーさん〜
2003年7月
HOME > 種の話 >“みんなの種宣言”上林裕子のコラム集
ピースシードの友人、“みんなの種宣言” 上林裕子のコラム集

GMと農業は共存しない

 〜モンサントと闘うカナダ農民シュマイザーさん〜

2003年7月

 
 「種子と農薬のセット販売」「農家との直接契約」など、新たな販売チャネルとして巨大な収益が見込まれる遺伝子組み換え作物(GMO)。農薬ラウンドアップに耐性をもった大豆やトウモロコシ、ナタネなどの栽培でGM企業の先頭を切るモンサントは、カナダ・アメリカで多くの農民を特許侵害で訴えている。組み換えナタネの花粉によって汚染されたカナダの農民・パーシー・シュマイザーさんは、モンサントから「特許侵害」と訴えられ、現在最高裁で係争中だ。「農民の権利と特許権の闘い」を闘うシュマイザーさんが来日、全国九ヶ所で講演を行い「カナダ・アメリカで今現実に起きていること」をつたえている。

◇農家の権利と特許権
 シュマイザーさんはカナダ・サスカッチェンで六百五十?の農場で小麦・ナタネなど作っている七十二歳の農家である。自分で地域にあった種子の開発も行ってきた。
 シュマイザーさんは、九八年にモンサントから「モンサントのGM種子を違法に入手した特許侵害」で訴えられる。そして、連邦裁判所で二週間半にわたって行われた予審で敗訴した。
「GM種子がどのような経緯で入ってきたかは問題にならないし、種子が何によって移動したかも問題ではない。GM種子であることが確認されれば、モンサントの特許を侵害したことになる」というものだ。「九八年以降の全ての収入をモンサントに渡さなけれればならない。その種子を使ってはならない」というのが判決。二審も敗訴し、現在最高裁で争っている。
 「この裁判は私個人の問題でもなく、カナダ・アメリカだけの問題でもなく、遺伝子組み換えが作付けされれば日本でも起こりうる。問題は、農家の権利と多国籍企業の特許権の闘いなのだ」。

◇新たな植民地主義
 モンサントは勝手にGMを栽培している農家を見つけたら通報するように市民に呼びかけ、モンサントポリスと呼ばれる調査員がGM栽培の証拠をつかみ、賠償請求を送りつける。請求書は「あなたがGM作物を育てている証拠をつかんでいる。あなたは××ヘクタールの農地を持っているので○○万ドルを払いなさい。そうしなければ訴訟を起こします」「この手紙を受け取ったことを誰にも言ってはならない」というもので、受け取った農家はおびえきってモンサントに逆らえなくなってしまうという。
 モンサントとのGM栽培の契約書は、シュマイザーさんに言わせると『もっとも抑圧的な契約書』だという。内容は@自分の種子を使ってはいけない、Aモンサントから種子と農薬を買わなければいけない、B違反した場合、モンサントが何をしても誰にもしゃべってはいけない、C一?当たり四十ドルをモンサントに支払う、Dモンサントポリスが三年間農場にやってくるのを認める。モンサントポリスは許可無く圃場や貯蔵庫、書類を見ることができる、というものだ。
 シュマイザーさんはアフリカの国々で講演したときに「種子を自家採種するのをあきらめてしまったら、土地の奴隷となり、新たな植民地主義にもどされてしまう」と、遺伝子組み換えの脅威を説いている。

◇GM小麦導入でカナダ農業は壊滅
 自分の種子が使えなくなったシュマイザーさんは、市販の種子を購入、マニトバ大学で検査をしてもらったがGM汚染していた。同大学が集めて検査した種子のほとんどからGMが検出されたという。
 シュマイザーさんは「一度自然界に出てしまったGMは、封じ込めることはできない」という。GMを栽培すれば、全てがGMになっていく。有機農家だけでなく、普通の農家もGMとは共存できない」「GM小麦がカナダ・アメリカで申請されているが、GM小麦が栽培され始めたら、農家はもう生き残っていくことはできないだろう」という。
 収量が上がり、農薬が減る、といわれたGMOは、収量も減少し、スーパー雑草の発生でむしろ農薬使用量は増えているという。「GMナタネはEUほか世界中で拒否され、市場を失った」「農家の権利と特許権の問題、環境への影響、健康への影響どれをとっても、GMがもたらすもので良いものはひとつもない」とシュマイザーさんは言う。

◇国内栽培への危機感
 今回シュマイザーさんを招聘したのは各地の生協のほか、有機農業研究会、農民連、各地の農協、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンなどの生産者や消費者、食にこだわる加工業者や販売会社など多彩な賛同団体・個人で構成する「遺伝子組み換えイネ作付け反対集会全国実行委員会」。
 背景として国内でのイネや大豆の作付け実験実施がある。愛知県農試は、モンサントと共同で進めていた遺伝子組み換えイネの開発を、昨年中止した。実験中止を求める市民の声を重視したからだ。しかし、今年に入って、北海道農業センター、岩手生物工学研究センター、筑波の農業技術研究所がそれぞれ、組み換えイネの一般圃場・隔離圃場実験を行っている。また、大豆では、生産者で組織するバイオ作物懇話会がモンサントから種子の提供を受け、一般圃場での作付け実験に、三年前から取り組んでおり、今年は開花までの実験を行うとしている。

TOP