上林裕子

ジャーナリスト
“みんなの種宣言”提唱。
“小さな種の会”の運営メンバー。
ワークショップなどで配付したコラムや緊急提言をピースシードのサイトに寄稿してもらいました。

連絡先:
kmbs@mvj.biglobe.ne.jp

CONTENTS
新着順に並んでいます。

「WTOは人を殺す」
カンクンで韓国農民が死の抗議〜イ・ギョンヘさんはなぜ、自らの命を絶ったのか〜
2003年10月12日

茨城・岐阜・滋賀で遺伝子組み換え大豆作付け
2003年9月

GMと農業は共存しない〜モンサントと闘うカナダ農民シュマイザーさん〜
2003年7月

 
 
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ピースシードの友人、“みんなの種宣言” 上林裕子のコラム集

茨城・岐阜・滋賀で遺伝子組み換え大豆作付け
2003年9月

遺伝子組み換え大豆(GM大豆)の国内作付けを推進する『バイオ作物懇話会』(本部宮崎県宮崎市、長友勝利代表)は、今年三県でGM大豆の作付けを行ったが、反対派によるすき込み(茨城)と、行政指導による自主廃棄(群馬・滋賀)で、いずれも中断された。同会は一昨年から一般圃場でのGM大豆の実験栽培を行っているが、これまではいずれも開花前にすき込んでいた。しかし、今年は開花・枝豆までを目指しており、組み換え作物作付けによる花粉汚染や風評被害を恐れる地元農民とトラブルになった。北海道や岩手、つくばでは組み換えイネの実験が進められている。組み換え作物の輸入をめぐる水際での攻防は、国内での組み換え作物栽培をめぐる新たな展開となってきたといえる。

地元反対派がすき込み
茨城で一般圃場でGM大豆(除草剤耐性大豆)問題に火がついたのは、七月二十三日。『バイオ作物懇話会』が実験栽培する同県谷和原村を市民団体が見学したとき、すでに大豆の花が咲き始めているのを見て大騒ぎとなった。「刈り取れ」「いや、できない」とのやりとりの末、反対派がすき込みを強行した。
すき込みを強行した背景には「花粉飛散」によるGM汚染と、「風評被害」への懸念がある。また、周辺農民への説明や行政への届け出がなかったことも不信感を募らせた。
 七月二十三日、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンが呼びかけ、GM実験栽培の現地視察を行ったところ、すでに花が咲き始めているのを発見した。一刻の猶予もないと作付け農家やバイオ作物懇話会に花粉飛散防止対策を要請した。地元の市民ネットワークの「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」は、農水省に「刈り取りをするよう行政指導をして欲しい」と求めたが、農水省は「国内栽培が認められているものなので、行政指導はできない、お願いするしかない」と答えた。  市民団体は作付け農家に花粉防護ネットを張ることを了承してもらい、ネットを張ろうとしたが風が強くて張れなかった。そうこうしているうちにたまりかねた人がすき込みを強行したものと思われる。
 行政交渉の場でも農水省は「作付けが認可されている大豆なのでどこに作付けしても自由」「花粉が飛散して隣の作物を汚染しても、栽培者に責任はない」と言う。現状では、花粉飛散で被害が及んでも罰則規定はないらしい。生産者の一人は言う「農協でさえGMは売れないから買い取らない。GM汚染で組み換えができてしまったら、被害を受けるのは生産者だ」。

岐阜・滋賀にも栽培圃場
 谷和原村で反対派がGM大豆をすき込んだのは七月二十六日のこと。しかし、話は茨城だけで終わらなかった。  谷和原村すき込み後の七月二十八日、バイオ作物懇話会が岐阜県瑞穂市と滋賀県中主町にGM大豆を植えたことが、茨城ネットが八月六日行った農水省との行政交渉の席で明らかになったからだ。
 作付けに反対している「遺伝子組み換え作物いらない!茨城ネットワーク」は、地元の環境団体、生協、JA、有機農家、一般市民など様々な立場の人が参加している。事務局を担っているのは常総生協の大石専務理事。岐阜県は自主廃棄済みなのでいいとして、滋賀の状況を把握、作付け阻止のために滋賀環境生協に連絡、滋賀環境生協、エスコープ大阪、地元JAなどが対応に奔走した。

JAが栽培者に圧力
 中主町の栽培者がすき込みに応じたのは、JA近江富士が「栽培を続行するなら、中主町の農産物は取り扱わない」との強い態度に出たからと言われる。滋賀県は大豆生産県であり、JAは風評被害を恐れて素早し対応をした。  こうしたJAの動きが滋賀県の「GM作付け禁止」の方針を導き出したと思われる。
 エスコープ大阪・生協連合きらりの川島三夫さんは「遺伝子組み換え問題の様相が変わった」と感じている。これまで食の安全の問題が中心だったが、花粉による環境汚染、グローバル化の中で、農薬企業が食と農を支配しようとする姿が見えてきた」「GMの国内栽培が、生産者にとってリアルな問題となった。消費者ではなく、JA、自治体がどう動くか、どう考えているかが問われた」(川島さん)。中主町のすき込みにも立ち会った川島さんは、また次のように指摘する。
 「バイオ作物懇話会の会員は全国に七百名、滋賀だけでも五〜六十人いるという。彼らは地域農業を担ってきた専業農家で、モンサントはそうした農家を狙い打ちして勧誘している」「グローバル化の陰で農業・農民が切り捨てられてきた状況の中でがんばってきた専業農家が、地域農業を救おうとGMに希望の光を見いだしている。かれらと、GMの陰にある問題を、同じテーブルについてもっと話し合う必要があると思う」。 

滋賀に続こう
 市民団体・生協の連携が素早い対応を生んだ…常総生協の大石専務理事は滋賀県の決定を「うれしいですね、さすがに環境配慮の滋賀県ですね」と、ほっとした様子。  納豆・醤油の産地である茨城にとっても、大豆は大事な作物だ。今後は署名を集めて県の方にガイドラインづくりを働きかけたいとしている。「これで終わりとは思っていません。生物多様性条約、WTOのTRIPsの例外規定をどうするか、国に『生命特許を認めない』という宣言をさせることはできないか、など考えています」。

<バイオ作物懇話会によるGM大豆国内作付け状況> 農水省提供資料
2001年
・山形県東田川郡藤島町…10a
・新潟県柏崎市…10a
・新潟県三島郡越路町…10a
・福井県武生市…10a
・石川県松任市…10a
・長野県南安曇郡穂高町…10a
・福岡県大川市…10a
・宮崎県宮崎市…10a
2002年
・北海道北見市…1ha
・茨城県筑波郡谷和原村…10a
・茨城県稲敷郡新利根村…10a
・福井県福井市…10a
・滋賀県伊香郡高月町…20a
・鳥取県気高郡鹿野町…10a
2003年
・茨城県谷和原村…20a
・滋賀県中主町…20a
・岐阜県瑞穂町…20a